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本、映画、音楽、、、など。

共犯

 

観てきました。

 

あらすじ

台湾映画。通学している高校の近くで、同じ高校の少女の(自殺と思しき)遺体を発見した高校生の少年たち。偶然の出会いながらも、死体の発見者という奇妙な共通点を持った彼らは、好奇心から彼女の死因を探ろうと試みる。証拠を繋げていく過程で、彼らの間に純粋な友情が育っていくお話。

 

以下ねたばれ。

 

ミステリーというより心理描写に心が惹かれました。

 

 

はじめ、全く異なるタイプの高校生の3人が、歪な繋がりであるとはいえ、ひとつの目的をみつけて友情を深めていくシーンは見ていてほほえましかったです。こういう小さな(小さな?)きっかけで素直に仲良くなれてしまうのは男の子ならではの美点かもしれない。

 

けれど物語の後半、湖での決定的なシーンを超えて、一人欠いてからのそれぞれの心理描写はとても生生しかった。

 

特にめがねの彼がソーシャルメディアに 追い込まれていく姿をみているとほんとうに痛ましい気持ちになった。私はそういうのの全盛期からすこし後の世代なのですが、多感な思春期にこんなものが手元にあったらどうなっていたのだろうと少し考え込んでしまう。

(これは余談だけど、顔の見えない状態での言葉の鋭さというものは、もっと強く認識されてしかるべきなのではないかと思う。ただでさえ強い同調圧力のはたらく高校や中学の小さなコミュニティでこんなものが飛び交うなんて、そこで一人ひとり個性や…特に主張を尊重することは、果たして可能なのかと考えてしまう。そういう側面から考えるならばSNSに関わらないに越したことないけど、友達付き合いのことを考えたら ばさりと切ってしまうのは難しいだろうなぁ。)

 

でも、最後は耐えられなくなって、はじめは周囲と合わせることで事実(=その場には自分いたということ)をゆがめて隠して自衛していた彼が崩れてしまったところをがこのお話の素敵なところだと思った。人として逃げずに、歪まずに、自分の中でかみ合わなかった部分(=顔の無い大多数の生徒たちへの恐怖が、友達を失った深い喪失感には及ばなかったこと)に気がついて、ぐちゃぐちゃに泣きながら大事なほうの感情を優先してくれて嬉しかった。

 

あまり触れてませんが溺れた友人を助けに行ったあいつは最後までいいやつだった。愚直なまでに誠実に不器用に、信念と友情をまもろうとした彼のことも、だれかがきちんと救ってくれるといいな。

 

嘘もみんなが信じればほんとうになる

という意味深な言葉があったけれど、その裏には信じてほしい気持ちがあって、それを足がかりに友情を築こうとしていたのだと思うとやるせない気持ちになる。 悲しい結末になってしまったけれど、それが混じりけの無い友情の危うさと美しさをより浮き上がらせていて、皮肉だなと思った。